はじめに
「介護保険が使えると聞いたけど、いったいどのくらいのサービスが受けられるの?」
ご家族の介護が始まったとき、多くの方が最初に感じる疑問がこれです。介護保険は「使えるサービスに上限がある」ということを知らないまま、思っていたよりサービスが使えなくて困った、という方を私は現場で何度も見てきました。
この「使えるサービスの上限」のことを、介護保険では「区分支給限度基準額(くぶんしきゅうげんどきじゅんがく)」と呼びます。難しい言葉ですが、要するに「要介護度ごとに、1ヶ月に介護保険で使えるサービスの上限」のことです。
この記事では、要介護度ごとの単位数と金額の目安、自己負担割合の判定基準、そして現場でよく起きる注意点まで、福祉用具相談員として日々現場に関わっている私がわかりやすくお伝えします。
そもそも「単位数」とは何か?
介護保険では、サービスの量を「円」ではなく「単位」という点数で管理しています。なぜ円ではなく単位なのかというと、同じサービスでも地域によって人件費が異なるからです。
たとえば、東京都23区(1級地)では1単位=11.40円、地方の多くの地域(その他地域)では1単位=10円となっています。同じ単位数のサービスを使っても、住んでいる地域によって実際の費用が変わる仕組みです。
💡 愛媛県はその他地域に分類されるため、1単位=10円で計算できます。
この記事の金額はすべて「1単位=10円」で計算した参考値です。実際の費用はお住まいの地域の地域区分によって異なります。
要介護度ごとの単位数と金額一覧(2026年現在)
要介護度ごとの単位数と金額の一覧は以下の通りです。
| 要介護度 | 1ヶ月の上限単位数 | 金額の目安(1単位10円) |
|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032単位 | 約50,320円 |
| 要支援2 | 10,531単位 | 約105,310円 |
| 要介護1 | 16,765単位 | 約167,650円 |
| 要介護2 | 19,705単位 | 約197,050円 |
| 要介護3 | 27,048単位 | 約270,480円 |
| 要介護4 | 30,938単位 | 約309,380円 |
| 要介護5 | 36,217単位 | 約362,170円 |
※2019年10月改定以降、2026年6月現在も単位数に変更はありません。
※表中の金額はサービス総費用の目安(1単位=10円換算)です。実際の自己負担はこの金額の1〜3割となります。
※実際の費用は地域によって異なります。
この表を見てわかる通り、要支援1と要介護5では単位数に約7倍の差があります。介護度が重くなるほど必要なサービス量が増えるため、使える上限も段階的に設定されているのです。
各介護度の状態と単位数の関係
要支援1・2|日常生活に一部支援が必要な状態
要支援1(5,032単位/月)は、日常生活はほぼ自分でできるものの、一部の動作に支援が必要な状態です。掃除や買い物など、生活の一部をサポートする程度のサービスをイメージしていただくと良いでしょう。
単位数としては最も少ない区分ですが、これは「それだけ軽度なので、それほど多くのサービスは必要ない」という考え方に基づいています。ただし、私が現場で感じるのは、「まだ元気だから」と思っていても、転倒予防の手すりや歩行器などの福祉用具を早めに導入することで、状態の悪化を防げるケースが多いということです。軽度のうちから上手にサービスを活用することが、重度化を防ぐ一番の近道です。
要支援2(10,531単位/月)は、要支援1よりも少し介護が必要な状態で、単位数は約2倍になります。要支援2になると、週に複数回のデイサービス(通所介護)やヘルパーの訪問などを組み合わせて利用できるようになります。週2〜3回の通所サービスと月1〜2回のヘルパー訪問を組み合わせると、この単位数がちょうど活用できるイメージです。
要介護1・2|部分的な介護が必要な状態
要介護1(16,765単位/月)は、立ち上がりや歩行が不安定で、一部の日常動作に介助が必要な状態です。認知機能の低下が見られる場合もあります。要支援2から一気に単位数が増えるのは、「要介護」になった時点でより本格的なサービス体系に移行するためです。
週3〜4回のデイサービス利用や、週1〜2回のヘルパー訪問、福祉用具レンタル(手すり・歩行器・介護ベッドなど)を組み合わせると、この単位数がちょうどよく活用できるイメージです。
要介護2(19,705単位/月)は、歩行や移動に介護が必要で、排泄や入浴にも一部介助が必要な状態です。要介護1よりも約3,000単位多くなり、サービスの組み合わせの幅が広がります。訪問入浴介護や、週4〜5回のデイサービスを利用している方も出てきます。家族の介護負担が少しずつ増してくる時期でもあり、ヘルパーやデイサービスを上手に組み合わせて、家族の負担を軽減することが大切になってきます。
要介護3・4|全面的な介護が必要な状態
要介護3(27,048単位/月)は、排泄・入浴・衣服の着脱などに全面的な介助が必要な状態です。単位数が一気に増え、毎日の訪問介護や複数のサービスを組み合わせても対応できるようになります。
現場での実感として、要介護3前後が「在宅介護の限界」を感じ始めるご家族が増えてくる時期でもあります。夜間帯の介護負担が増し、ショートステイ(短期入所)を定期的に組み込むことで家族の休息を確保するケアプランが増えてきます。「毎日がしんどい」と感じてきたら、迷わずケアマネジャーに相談してください。
要介護4(30,938単位/月)は、日常生活全般に介助が必要で、意思疎通が難しくなってくる場合もある状態です。毎日の訪問介護に加え、週複数回のデイサービス、定期的なショートステイを組み合わせても、単位数の範囲内で収まることが多くなります。この段階では、福祉用具も電動ベッドやエアーマット(床ずれ防止)などの本格的なものが必要になってくるケースが増えます。
要介護5|ほぼ全介助が必要な状態
要介護5(36,217単位/月)は、ほぼ寝たきりで意思疎通が困難な最も重度な状態です。最大の単位数が設定されており、毎日の訪問介護(複数回)、訪問看護、福祉用具レンタル(電動ベッド・エアマットなど)などを組み合わせても対応できるようになっています。
ただし、要介護5の方の在宅介護は、家族への身体的・精神的負担が非常に大きくなります。単位数が最大でも、それだけで完全に在宅生活を支えるには限界があるケースも多く、施設入所を検討するご家族も増えてきます。在宅か施設かの判断は、本人の意向・家族の状況・地域のサービス体制を総合的に考えることが大切です。
自己負担額はいくらになる?
区分支給限度基準額の範囲内でサービスを利用した場合、利用者の自己負担は原則として1割です。ただし、前年の所得が一定以上の方は2割または3割負担となります。
| 要介護度 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
|---|---|---|---|
| 要支援1 | 約5,032円 | 約10,064円 | 約15,096円 |
| 要支援2 | 約10,531円 | 約21,062円 | 約31,593円 |
| 要介護1 | 約16,765円 | 約33,530円 | 約50,295円 |
| 要介護2 | 約19,705円 | 約39,410円 | 約59,115円 |
| 要介護3 | 約27,048円 | 約54,096円 | 約81,144円 |
| 要介護4 | 約30,938円 | 約61,876円 | 約92,814円 |
| 要介護5 | 約36,217円 | 約72,434円 | 約108,651円 |
※限度額いっぱいまでサービスを使った場合の参考値です。
💡 ただし、限度額いっぱいまでサービスを使う方は実際には少数です。要介護5の方でも、平均的なサービス利用費は限度額の約65%程度といわれています。毎月の実際の自己負担は、表の金額よりも少なくなるケースがほとんどです。
自己負担割合はどうやって決まるの?1割・2割・3割の判定基準
「自分は何割負担になるのだろう」と気になる方も多いと思います。ここでは判定の仕組みをわかりやすくお伝えします。
介護保険サービスを利用するときの自己負担は、本人の前年の所得と、世帯の年金収入等の合計によって毎年判定されます。
まず大前提として、40〜64歳の方(第2号被保険者)は一律1割負担です。2割・3割の判定は、65歳以上の方(第1号被保険者)にのみ適用されます。
1割・2割・3割の判定フローチャート
まず「本人の合計所得金額」を確認し、次に「世帯の年金収入等の合計」で最終判定します。
ステップ1:本人の合計所得金額を確認する
- 220万円以上 → 3割負担の可能性あり(ステップ2へ)
- 160万円以上220万円未満 → 2割負担の可能性あり(ステップ2へ)
- 160万円未満 → 原則1割負担
ステップ2:世帯の年金収入+その他合計所得金額を確認する
合計所得金額が220万円以上の方
| 世帯の状況 | 年金収入等の合計 | 負担割合 |
|---|---|---|
| 単身世帯 | 340万円以上 | 3割 |
| 2人以上世帯 | 463万円以上 | 3割 |
| 上記に該当しない場合 | — | 2割 |
合計所得金額が160万円以上220万円未満の方
| 世帯の状況 | 年金収入等の合計 | 負担割合 |
|---|---|---|
| 単身世帯 | 280万円以上 | 2割 |
| 2人以上世帯 | 346万円以上 | 2割 |
| 上記に該当しない場合 | — | 1割 |
わかりやすく整理すると
| 負担割合 | 対象となる方の目安 |
|---|---|
| 1割 | 前年の合計所得が160万円未満の方、または収入基準に満たない方。多くの方がこちらに該当します |
| 2割 | 合計所得160万円以上で、単身世帯の年金収入等が280万円以上(2人以上世帯は346万円以上)の方 |
| 3割 | 合計所得220万円以上で、単身世帯の年金収入等が340万円以上(2人以上世帯は463万円以上)の方 |
💡 実際に2割・3割負担になる方は全体の約8%程度です。大多数の方は1割負担でサービスを利用できています。
判定で使う「収入」の注意点
判定に使う「収入」の定義には注意が必要です。現場でよく混乱が起きるポイントなので、しっかり確認しておいてください。
含まれる収入(課税年金)
- 老齢年金(国民年金・厚生年金など)
- 給与収入
- 不動産収入
- 株式の配当など
含まれない収入(非課税年金)
- 遺族年金
- 障害年金
⚠️ 「年金しかもらっていないから1割のはず」と思っていたのに、実は不動産収入や株の配当が合算されて2割になってしまった——というケースが現場では珍しくありません。年金以外の収入がある方は特に注意が必要です。
また、世帯の状況で判定が変わる点も重要です。本人の所得だけでなく、同一世帯の65歳以上の方の収入も合算されます。「自分の年金だけ見て1割だと思っていたら、配偶者の収入を合算したら2割だった」というケースもよく見かけます。
負担割合はいつ決まる?「介護保険負担割合証」とは
負担割合は毎年7月頃に市区町村から送られてくる「介護保険負担割合証」で確認できます。この証書には「1割」「2割」「3割」のいずれかが明記されており、8月1日から翌年7月31日までの1年間有効です。
サービスを利用する際は、介護保険被保険者証と一緒にこの負担割合証を事業者に提示します。手元にない方は、一度探してみてください。
💡 「昨年まで1割だったのに、急に2割になった」という連絡が、毎年8月以降に現場に多く届きます。これは前年に不動産の売却や株の配当など、一時的な収入があった場合に起こりやすいパターンです。心当たりがある方は、7月に届く負担割合証を早めに確認しておきましょう。
2割・3割でも安心!「高額介護サービス費」という救済制度がある
2割・3割負担と聞くと「費用が青天井になってしまうのでは」と不安になる方もいますが、安心してください。介護保険には「高額介護サービス費」という、月々の自己負担に上限を設ける制度があります。
1ヶ月の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超えた分が後から払い戻される仕組みです。一般的な所得の方であれば、月額44,400円が上限の目安となります(所得区分により異なります)。
つまり、3割負担と判定されても、月々の介護サービス費の自己負担は上限額でストップします。食費・居住費・日常生活費などは別途かかりますが、サービス費そのものが青天井になることはありません。
高額介護サービス費の申請は初回のみ必要です。該当する方には市区町村から通知が届きますので、忘れずに申請しておきましょう。
2026年現在の制度動向:2割負担の対象者拡大が検討中
最後に、現在進行中の制度見直しについてお伝えしておきます。厚生労働省は2025年12月に、現在年収280万円以上が対象となっている2割負担を、最大で年収230万円以上まで拡大する見直し案を提示しました。ただし、急激な負担増を避けるための配慮措置も並行して検討されており、2026年度以降の制度改正に向けて議論が継続されています。
現時点(2026年7月)では、1割・2割・3割の基本的な枠組みに大きな変更はありません。ただし、今後の制度改正によって判定基準が変わる可能性があります。毎年7月に届く負担割合証を必ず確認し、変更があった場合はケアマネジャーに早めに共有しておくことをおすすめします。
限度額を超えたらどうなる?
⚠️ 限度額を超えた分は全額自己負担になります。
これは現場でとても重要なポイントです。ケアプランを作成するケアマネジャーは、毎月の合計単位数が限度額を超えないように調整します。でも、サービスの組み合わせ方によっては、気づかないうちに限度額を超えてしまうことがあります。
たとえば、要介護1の方(限度額16,765単位)が、訪問介護を毎日使いながらデイサービスも週4回通い、さらに福祉用具もレンタルしていると、単位数が積み上がってオーバーしてしまうケースがあります。
もし限度額を超えそうな場合は:
- ケアマネジャーに相談してサービスの種類や頻度を調整する
- 限度額を超えてでも必要なサービスを受ける場合は、超過分を全額自己負担で使い続ける
- 要介護認定の区分変更申請を検討する(状態が重くなっていれば上位の介護度に変更できる可能性がある)
限度額に含まれないサービスもある
区分支給限度基準額は「在宅サービス」に適用されるものです。以下のサービスは限度額の対象外となり、別途介護保険が適用されます。
- 施設サービス(特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院)
- 居宅療養管理指導(医師・薬剤師・歯科医師などが自宅を訪問して行う管理指導)
- 特定施設入居者生活介護(有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅での介護)
- グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
また、以下は区分支給限度額とは別枠で保険給付されます。
- 特定福祉用具購入費:年間10万円が上限(ポータブルトイレ・シャワーチェアなど)
- 住宅改修費:生涯で原則20万円が上限(手すりの取り付け・段差解消など)
相談員から一言
福祉用具相談員として日々現場に関わっていると、「もっと早く単位数のことを教えてもらっていれば」という声をよく聞きます。
単位数の知識があれば、ケアマネジャーとの相談がスムーズになります。「今月あと何単位使えますか?」と聞けるようになると、サービスの選択肢をより賢く使えます。また、「この福祉用具をレンタルすると何単位くらい使いますか?」と確認することで、他のサービスとのバランスも取りやすくなります。
介護保険は「知っている人ほど得をする制度」です。ぜひこの記事を参考に、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに積極的に相談してみてください。
まとめ
- ✔️ 介護保険には月ごとの上限(区分支給限度基準額)がある。要介護度が高いほど上限単位数が大きくなる
- ✔️ 単位数は地域によって1単位あたりの金額が異なる。愛媛県は1単位=10円(その他地域)
- ✔️ 自己負担は原則1割。所得によっては2割・3割になるが、全体の約8%程度
- ✔️ 負担割合は毎年7月の「介護保険負担割合証」で確認。8月から翌年7月まで有効
- ✔️ 2割・3割でも「高額介護サービス費」で月々の上限があるため青天井にはならない
- ✔️ 限度額を超えた分は全額自己負担になるため、ケアマネジャーとの調整が重要
- ✔️ 施設サービスや住宅改修費は別枠で給付される
介護保険の単位数や負担割合について疑問がある方は、担当のケアマネジャーや、まだ介護保険を使い始めていない方は地域包括支援センターにご相談ください。
⚠️ 注意事項:本記事の情報は2026年7月時点のものです。介護保険制度は定期的に改正されます。最新情報はお住まいの市区町村または厚生労働省のホームページでご確認ください。
この記事を書いた人:愛媛県でみかん農家と福祉用具相談員を掛け持ちする。日々、介護が必要な方やそのご家族と向き合いながら、介護保険や福祉用具についての情報を発信中。


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